今月の言葉(掲示伝導)

「先が見える」

むかし、独りの老人が暮らしていました。
朝夕の野良仕事の行き来には、必ずお寺に立ち寄り、お念仏をとなえる毎日でした。
村の若者たちは、そんな老人を日頃から馬鹿にしていました。
 

ある日、「なあ、爺さんよ、お前はその齢になって地位も名誉も財産もない。本当につまらぬ人間だな。爺さんを金の値にたとえるなら最低の一文銭だ」とあざ笑いました。


老人は、「なるほど、わしはー文銭かもしれん。それなら若い衆よ、お前さんたちはどれほどの価値かな」
とたずねます。
「俺たちの人生は前途洋々、金ぴかぴかの最高の小判だ」という答えに老人は、

「一文銭は、穴が空いているから先がよく見える。小判は、今の自分のまぶしさで先が見えん。転ばぬよう気を付けてな」と論したそうです。
 

この世の輝きではなく、しっかリと往く先を見据えた生き方こそ、浄土宗『法然上人のお念仏のみ教え』にほかなりません。

三浦組 東漸寺 小松崎成淳